遺言

遺言とは

遺言とは、死後の法律関係を定めるための最終意思の表示の事です。
遺言があった場合は、遺言が優先されその内容に沿って相続財産を分割します。ただし、相続人間で別の分割合意がされた場合は、遺言があっても従わないことも可能です(遺言執行者の定めがある場合を除く)。
遺言の内容に関わらず、相続人のうち配偶者・直系卑属・直系尊属には、一定の「遺留分」(最低の相続分の権利)が認められていますので、これを無視した内容で作成した場合、「遺留分減殺請求」などが出され、その後のトラブルになる可能性があります。
「遺言は、書きさえすればトラブルを防げる」というものではなく、一般に思われているより、複雑で面倒な要素も数多くあります。下手な遺言書を書くと却ってトラブルになることもあり得ますので
是非、専門家のアドバイスを受けてから作成して頂く事をお薦めします。

遺言能力

遺言者が遺言の際に、意思能力、すなわち遺言内容及びその法律効果を理解判断するのに必要な能力を備えていることが必要です。これを遺言能力といいます(遺言年齢及び行為能力の問題や、更には、その方式の前提となる身体的能力の問題、例えば、自筆証書遺言における自書能力や公正証書遺言におけるロ授能力・読聞能力等を含む)。遺言能力の有無の判断の基準については、問題となる行為の特性や難易等との関係で個別に判定されます。
例:成年被後見人が遺言を作成するには意識がしっかりと回復している事に加え、医師2人以上の立ち会いが必要となります(民法第973条)。

主な遺言の種類

自筆証書遺言

遺言者が全文・日付・氏名を自書し、署名・押印した遺言です(民法第968条)。
※ひとつでも条件を満たさないと遺言として無効です。
自筆証書遺言の場合、相続開始後に家庭裁判所の「検認」(手間と時間が掛かる)が必要です。
※手軽に作成出来る点が利点ですが、後で偽造、変造、廃棄、紛失などの恐れがあり、トラブルにつながりやすい点が欠点です。

公正証書遺言

遺言者が、公証人の面前で遺言の内容を口授し、それに基づき公証人が内容を文章にまとめ、作成する遺言です(民法第969条)。
遺言時に公証人・証人2名(ご依頼頂ければ、司法書士2名を証人)の関与を必要とし、公証役場に原本が保管されます。
自分で戸籍謄本や登記事項証明書等数々の必要書類を揃え提出すること、文案を考えることが必要です。
※原本・正本・謄本の3通が作成され原本は公証役場で保管されますので偽造、変造、廃棄、紛失の心配がありません。
※公証役場も所により大変に忙しく、対応上時間的な制約が出ることがあります。
※司法書士に依頼して、必要書類の収集をしてもらうことや、文案のアドバイスを受けたり、証人や遺言の執行者になってもらうことなどができますので、良い遺言の作成と実現が可能になります。

秘密証書遺言

遺言者が、遺言の内容を記載した書面(自筆証書遺言と異なり、自書する必要はないのでワープロ等を用いても、第三者が筆記したものでも構いません。)に署名押印をした上で、これを封じ、遺言書に押印した印章と同じ印章で封印した上、公証人及び証人2人の前にその封書を提出し、自己の遺言書である旨及びその筆者の氏名及び住所を申述し、公証人がその封紙上に日付及び遺言者の申述を記載した後、遺言者及び証人2人と共にその封紙に署名押印することにより作成される遺言です(民法第970条)。
間違いなく遺言者本人の遺言書であることを明確にでき、かつ、遺言の内容を誰にも明らかにせず秘密にすることが出来るのが利点ですが、公証人は、その遺言書の内容を確認することはできませんので、遺言書の内容に法的不備があったり、後に紛争の種になったり、無効となってしまう危険性が生じる恐れがあるのが欠点です。
また、自筆証書遺言と同様、この遺言書を発見した者が、家庭裁判所に届け出て、検認手続を受けなければなりません。

遺言でしか出来ないこと

以下の行為をするためには必ず遺言を作成する必要があります。

1.法定相続分と異なる割合による相続分の指定または指定の委託
2.遺贈
3.遺産分割方法の指定または指定の委託
4.遺産分割の禁止(上限は5年間)
5.遺言執行者の指定または指定の委託
6.遺留分減殺方法の指定
7.未成年者の後見人・後見監督人の指定
8.共同相続人間の担保責任の指定

遺留分、遺言執行者について

遺留分

遺留分とは、相続人に対して最低限度留保された相続財産の割合の事です。
相続財産は被相続人が生前処分や遺言による死因処分によって自由に処分することが出来、推定相続人の相続への期待は権利として保障されないのが原則です。
しかし、相続には相続人の生活保障の意義を有する側面がある為、被相続人が自身の財産を自由に処分出来る権利と相続人の権利保護との調整を図って創設された権利です。

※兄弟姉妹が相続人となる場合、遺留分はありません。
※遺留分を侵害する遺贈、贈与、相続があった場合でも当然に無効となる訳ではなく、遺留分権利者からの
「遺留分減殺請求」によって全部or一部が失効します。
相続人
遺留分
兄弟姉妹
無し
直系尊属のみ
全員で3分の1
配偶者のみ
2分の1
子のみ
全員で2分の1
配偶者と子
全員で2分の1
配偶者と直系尊属
全員で2分の1

遺言執行者

遺言の効力発生後(=遺言者の死後)、遺言の内容を確実に実現してくれる人のことを言います。
遺言執行者は相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します(民法第1012条)。

遺言はその内容が実現できなければ意味がありません。
遺言執行者には、未成年者や破産者を除いて誰でもなることができます(民法第1009条)が、遺言の執行は不動産の名義変更、預貯金の解約や株式の名義変更等たくさんの複雑で専門的な手続が必要になります。
また、相続人や受遺者の一人が遺言執行者になると、他の相続人などから相続財産を独り占めにしているなどのあらぬ疑いをかけられることもあります。
無用なトラブルを生まないためにも、利害関係人である親族を選任するよりは、司法書士や弁護士などの専門家を選任するほうがよろしいかと思われます。

遺言の撤回、取消について

遺言者は、いつでも遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を撤回することが出来ます(民法第1022条)。
また、以下の場合には、遺言が撤回されたものとみなされます(法定撤回事由)。

・遺言内容が抵触する遺言書が複数ある場合、その抵触する部分については後の遺言書によって、前の遺言書が撤回されたものとして扱われる(民法第1023条1項)。
※抵触しない部分については前の遺言書が依然として有効です。
※遺言者が、遺言作成後、遺言内容と抵触する生前処分その他の法律行為をした場合、その抵触する部分については遺言は撤回されたものとして扱われます(民法第1023条2項)。
・遺言者が故意に遺言書又はその目的物を破棄した時は、その破棄した部分については遺言を撤回したものとみなされる
(民法第1024条)。

※一度作成された遺言について変更・取消をお考えの方におかれましてはトラブルの予防という見地から、上記の法定撤回に依らず、新しい内容の遺言書を作成された上で遺言の変更・取消の意思を明確にされる事をお薦めします。

公証人の手数料

公正証書遺言、秘密証書遺言の作成を行う場合、公証人に遺言へ認証をしてもらう必要があります。
こちらはその際に公証役場へ納める手数料です。
目的の金額
手数料
100万円まで
5,000円
200万円まで
7,000円
500万円まで
500万円まで
1,000万円まで
17,000円
3,000万円まで
23,000円
5,000万円まで
29,000円
1億円まで
43,000円
1億円を超え3億円以下
4万3000円に5000万円までごとに1万3000円を加算
(例:目的の金額が2億円の場合、69,000円)
※遺言手数料
・目的の金額が1億円までは上記の金額に11,000円加算。
・遺言の取消は11,000円(目的の金額の手数料の半額がこれを下回る時はその額)
・秘密証書遺言は11,000円

詳細についてお知りになりたい方は下記をご参照下さい。
http://www.koshonin.gr.jp/hi.html

遺言を作成するべき方

下記に該当される方におかれましては遺言を作成される事を強くお薦め致します。

1.お子様がいらっしゃらない方
2.行方不明の親族がいらっしゃる方
3.内縁の妻(又は夫)がいらっしゃる方
4.別れた配偶者との間にお子様がいらっしゃる方
5.相続権の無い方(お孫さんや甥・姪など)へ財産を残したいとお考えの方
6.親族の中に知的障害者・精神障害者がいらっしゃる方
7.会社経営者、オーナーの方(後継者指定のため)

ご依頼頂いた場合の手続の流れ

STEP 1 お問い合わせ(電話・FAX・メール)及び無料相談
『遺言を作成してみたい』、『遺言について詳しく知りたい』、『一度遺言を作成はしてみたけど内容の変更をしたい』等とお考えになりましたらまずは当事務所までお問い合わせ下さい。
分かりやすく、ていねいにご案内致します。
無料相談後、遺言作成手続きをご依頼される場合には、業務委任契約を締結させていただきます。
上記の“遺言を作成するべき方”に該当される方におかれましては遺言を作成される事を特に強くお薦めいたします。
STEP 2 推定相続人及び遺産の調査・確定、
お話をお伺いし推定相続人および遺産となる財産の確認をさせて頂きます。
必要書類のうち当事務所にて収集代行可能なものにつきましては代行収集致します。
『誰に』『何を』『どの位遺すか』の判断の為に必要な情報となりますのでご協力をお願いします。
STEP 3 必要書類、費用についてのご案内
相続人及び相続財産が確定出来ましたら、相続人の方全員に遺産分割協議書へ御署名・御捺印(実印)を頂きます。
当事務所にてお会いできない相続人の方には、ご本人様確認として、「本人限定受取郵便」にて遺産分割協議書をお送りさせていただきます。
協議書返送後、意思確認のお電話をさせて頂きます。お手数ですが御協力の程よろしくお願いします。
※遺産分割協議をせず、法定相続分通りに登記を申請する場合は協議書の作成は不要となります。
STEP 4 遺言の内容案の作成・推敲
どなたにどの財産をどの位渡すのかについて希望を伺ったうえで文案を作成いたします。
遺留分権利者がいる場合は遺留分に配慮した内容となる様、適宜助言を致します。
基本的にはお客様のご要望通りに作成するのが原則となりますが、専門家の見地から変更を加えたり修正を加えたりした方が良いと思われる箇所につきましてはその都度ご案内致します。
内容がまとまりましたら当事務所にて公証役場と打ち合わせを致します。

遺言の内容の例
(1)相続分
  法定相続分と異なる相続分の指定、相続財産を相続人毎に指定、など
(2)財産の処分
法定相続人以外の方(孫や甥・姪など)へ財産を遺す、慈善団体などへの寄付、など
(3)親族関係
  婚外子の認知、相続人の廃除、など
(4)附言
  親族への感謝の言葉や、配分理由についての説明など
STEP 5 公証役場にて公正証書遺言の作成
公証役場へお越し頂き、ご確認頂いた文案を公証人と読み合わせを致します。
内容に異存が無ければ署名・捺印(実印)を頂きます。
その書面に証人2人(当事務所スタッフ)が署名・捺印をし公証人が認証をして作成完了です。
費用をお支払い頂き、正本と謄本をお受け取りになれば全ての手続きが完了となります。

※お体が不自由な方や、病気で入院中の方などの為に公証人に出張して頂いて公正証書遺言を作成する事も可能ですのでご相談下さい。

費用

当事務所でご利用いただく場合の費用
プラン
追加料金なしの定額例
公正証書遺言作成サポート
(文案作成、公証役場との打合せ、推定相続人調査、遺留分の確認、証人2名
¥100,000(税抜)
※書類取得経費、交通費は除く
作成済み遺言変更サポート
(※変更の程度を超えて新たに作成するのと同様の場合は適用になりません)
公正証書遺言の変更につき
¥50,000(税抜)
自筆証書遺言の変更につき
¥30,000(税抜)